・病気なリヒの病室にエドが不老不死の薬を持ってくる
・幸せなのか湿っぽいのか?
・微妙に「世界の中心で、愛をさけぶ」の続きっぽいかも
・妄想した人:リッヒをこよなく愛するぱんだ
薬ネタはgkさんからいただきました!ありがとうです!
・幸せなのか湿っぽいのか?
・微妙に「世界の中心で、愛をさけぶ」の続きっぽいかも
・妄想した人:リッヒをこよなく愛するぱんだ
薬ネタはgkさんからいただきました!ありがとうです!
エドワードの差し出す小瓶には薄く白く濁った水が入っている。はい、と渡されてハイデリヒは中身はなんだろうと考えていた。たぷたぷ、揺らしてみるが普通の液体のようだ。
「これ何ですか?」
ハイデリヒが訊ねるとエドワードはすぐには答えず、少し眉根を寄せて苦しそうな表情になった。
「俺が作った、薬だ」
薬なんて作れるのか、一瞬ハイデリヒは驚いたが彼の知識量を考えると作れて当然かもしれないと思った。
「どういった効用があるんですか」
エドワードはその言葉にまた苦しそうにして、はあ、とため息をついて病室の端にあった丸椅子に腰掛けた。そんなに言いづらいことなのか、どうしたんだろう。俯くエドワードを心配に思っているとゆっくりと彼が口を開いた。それはハイデリヒにとって、ひどく重い二つの選択肢だった。
「これを飲むと、俺と同じように、ある程度で成長が止まり死ぬことがなくなる。つまり不老不死だ。お前の直面している死から救うことができる、そう思って作った」
「僕、生きられるんですか、エドワードさんと一緒にいられるんですか」
「ああ、でも生きられるじゃない・・・・・・死ねない、ってことだ。わかるか」
わからない、わけではない。きっと死ねないということは辛いことだ。
「老化の来ない人間なんて常識ではありえない、だから近しい人とは全て離れないといけなくなる。友達も両親も、二度と会うことができなくなる。それはある意味、死ぬのと同じだ」
言葉の重みにハイデリヒの心も沈む。エドワードの金色の目がひどく暗い気がした。
「親とか友達とか仲間に会えなくなるのって、どれくらい辛いのか、わかるか」
問われて、わかる、とは答えられなかった。だってエドワードはそれを経験したのだ。向こうの世界からこちらへ、何もかも捨てて、ただ弟を生かすというそのために、たった一人の大切な弟のために、全てをなくしたのだ。その人の前で、わかりますなんて答えるのは失礼で、ハイデリヒは口を閉ざしていた。
「これを飲むと死ねない、けど飲まなければ死ねる。親や友達と離れることなんてなく、最後までそばにいられる。だけど飲めば、皆と離れて生き続けるんだ」
重苦しい沈黙。ハイデリヒの手のひらの中にある瓶の液体は体温で生ぬるくなりつつある。不意にすっとエドワードの手が伸びてきてそれは持っていかれた。手持ち無沙汰だったのだろう、取り上げてからエドワードもそれをハイデリヒと同じように中の液体を揺らしていた。そしてまた重い、使用方法と効用の説明。
「飲めば三日三晩くらいで体の細胞が作り変わる。老化のない細胞ばかりになるんだ。今お前を蝕んでいるがん細胞とは違う、ああどうやって説明したらいいかな、とにかく俺と同じようにただひたすら年をとらず生きていくことになる」
そこまで言ってエドワードの目線があがり、ハイデリヒの顔を見た。そこにさっきまでの悲壮感はない。決断を迫る、選択肢を突きつける、強い感情の混じった金色の瞳だった。
「全てを捨てて俺と生きる覚悟があれば、もう一度、受け取れ」
しんとした病室、エドワードの言う『覚悟』があるか、考える。ひゅうひゅう、窓の外では風の音がしている。しばらく風の音だけが響いて、ハイデリヒの手がすっと動き、小瓶を受け取った。
「いいのか」
ハイデリヒが小瓶に口をつける直前に、これが最後の最後だともう一度問いかける。驚きと苦しげな色の交じり合った表情のエドワードとは対照的に、ハイデリヒは穏やかに笑っていた。
「エドワードさんは、弟さんのために一人でこっちへ来たんですよね」
「まあ、そうだけど」
でも今はお前の話をしているんじゃないか、アルじゃなくてアルフォンスお前のことだ。何を言うのだろう。
「それがどうしたんだ」
「弟さん、大切だと思ったですよね」
「・・・そうだ、アルが生きられるなら、なんでもいいと思ってた」
たとえ自分がそばにいなくても、自分のせいで体を失った弟がまた元通りの体で生きるならそれでいい。あのとき自分はそう思ったんだ。自分の全てを捨ててもいいと思うほどに、アルが大事だった。
「僕、エドワードさんが好きです」
「何度も聞いた」
「エドワードさんも、これを作ってくれたって事は、僕と一緒に生きてくれるってことですよね、一緒にいたいってことですよね」
違います?と笑うハイデリヒの青い瞳がきれいだとぼんやり思った。
「・・・そう、だよ」
俺は、お前が不老不死になってでも、一緒に生きていけたらと思ってしまったんだ。エドワードの手のひらにそっとハイデリヒの片手が重なる。そして自然に体が引き寄せられ、くちづけられた。自分より少し体温の低いくちびるに、エドワードは病気のせいなのかなと思った。重ねるだけのくちづけが終わっても、ハイデリヒはそのままエドワードを抱き寄せたままにしていた。お互い離れる気もなく、かといって抱きしめあうこともなく寄り添うだけ。ハイデリヒの胸元に耳を寄せると、とくとく、心臓の動く音がして嬉しかった。
「エドワードさん」
ひどく優しい、何もかもを許すような声色。オレンジ色の夕陽の色と合わさって、全てが作り物みたいに思えた。そっとハイデリヒの顔を見れば、やっぱり優しい笑顔のままで。
「僕も、親も友達も仲間も全部捨ててもいいくらいに、あなたが好きなんです」
そうしてぐっと瓶の中身を飲み干した。空になった瓶を渡され、エドワードはぼんやりとハイデリヒがまぶたを閉じるのを見ていた。
「あなたが好きです、次に起きたら、それからはずっと一緒ですよ。嬉しいな。あなたとずっと、一緒だ」
そう呟きながら幸せそうに笑うハイデリヒの手をぎゅっと握り締める。うん、うん、全てに頷いて、エドワードの目からは涙がこぼれた。ハイデリヒが死なずにすむという嬉しさと、こんな風に追い詰めるようにして彼の平凡な人生を奪ってしまった切なさの、涙。
次に目が覚めたらどうしようか、ああまずは体調を整えて、それからそうだな、数年くらいならまだ成長は続くだろうからそれまではハイデリヒの大切な親や友達と一緒にいさせてあげたい。それから、皆から離れなくちゃいけなくなったらどうしようか。お前と一緒に考えていけばいいか、時間はたくさんあるんだ、本当に、たくさん。
「ずっと、一緒にいられるな」
好きだよ、アルフォンス。そっと閉じたまぶたにくちづけて、しずかな病室で、二人の新しい日々を始めるための儀式が終わった。
「これ何ですか?」
ハイデリヒが訊ねるとエドワードはすぐには答えず、少し眉根を寄せて苦しそうな表情になった。
「俺が作った、薬だ」
薬なんて作れるのか、一瞬ハイデリヒは驚いたが彼の知識量を考えると作れて当然かもしれないと思った。
「どういった効用があるんですか」
エドワードはその言葉にまた苦しそうにして、はあ、とため息をついて病室の端にあった丸椅子に腰掛けた。そんなに言いづらいことなのか、どうしたんだろう。俯くエドワードを心配に思っているとゆっくりと彼が口を開いた。それはハイデリヒにとって、ひどく重い二つの選択肢だった。
「これを飲むと、俺と同じように、ある程度で成長が止まり死ぬことがなくなる。つまり不老不死だ。お前の直面している死から救うことができる、そう思って作った」
「僕、生きられるんですか、エドワードさんと一緒にいられるんですか」
「ああ、でも生きられるじゃない・・・・・・死ねない、ってことだ。わかるか」
わからない、わけではない。きっと死ねないということは辛いことだ。
「老化の来ない人間なんて常識ではありえない、だから近しい人とは全て離れないといけなくなる。友達も両親も、二度と会うことができなくなる。それはある意味、死ぬのと同じだ」
言葉の重みにハイデリヒの心も沈む。エドワードの金色の目がひどく暗い気がした。
「親とか友達とか仲間に会えなくなるのって、どれくらい辛いのか、わかるか」
問われて、わかる、とは答えられなかった。だってエドワードはそれを経験したのだ。向こうの世界からこちらへ、何もかも捨てて、ただ弟を生かすというそのために、たった一人の大切な弟のために、全てをなくしたのだ。その人の前で、わかりますなんて答えるのは失礼で、ハイデリヒは口を閉ざしていた。
「これを飲むと死ねない、けど飲まなければ死ねる。親や友達と離れることなんてなく、最後までそばにいられる。だけど飲めば、皆と離れて生き続けるんだ」
重苦しい沈黙。ハイデリヒの手のひらの中にある瓶の液体は体温で生ぬるくなりつつある。不意にすっとエドワードの手が伸びてきてそれは持っていかれた。手持ち無沙汰だったのだろう、取り上げてからエドワードもそれをハイデリヒと同じように中の液体を揺らしていた。そしてまた重い、使用方法と効用の説明。
「飲めば三日三晩くらいで体の細胞が作り変わる。老化のない細胞ばかりになるんだ。今お前を蝕んでいるがん細胞とは違う、ああどうやって説明したらいいかな、とにかく俺と同じようにただひたすら年をとらず生きていくことになる」
そこまで言ってエドワードの目線があがり、ハイデリヒの顔を見た。そこにさっきまでの悲壮感はない。決断を迫る、選択肢を突きつける、強い感情の混じった金色の瞳だった。
「全てを捨てて俺と生きる覚悟があれば、もう一度、受け取れ」
しんとした病室、エドワードの言う『覚悟』があるか、考える。ひゅうひゅう、窓の外では風の音がしている。しばらく風の音だけが響いて、ハイデリヒの手がすっと動き、小瓶を受け取った。
「いいのか」
ハイデリヒが小瓶に口をつける直前に、これが最後の最後だともう一度問いかける。驚きと苦しげな色の交じり合った表情のエドワードとは対照的に、ハイデリヒは穏やかに笑っていた。
「エドワードさんは、弟さんのために一人でこっちへ来たんですよね」
「まあ、そうだけど」
でも今はお前の話をしているんじゃないか、アルじゃなくてアルフォンスお前のことだ。何を言うのだろう。
「それがどうしたんだ」
「弟さん、大切だと思ったですよね」
「・・・そうだ、アルが生きられるなら、なんでもいいと思ってた」
たとえ自分がそばにいなくても、自分のせいで体を失った弟がまた元通りの体で生きるならそれでいい。あのとき自分はそう思ったんだ。自分の全てを捨ててもいいと思うほどに、アルが大事だった。
「僕、エドワードさんが好きです」
「何度も聞いた」
「エドワードさんも、これを作ってくれたって事は、僕と一緒に生きてくれるってことですよね、一緒にいたいってことですよね」
違います?と笑うハイデリヒの青い瞳がきれいだとぼんやり思った。
「・・・そう、だよ」
俺は、お前が不老不死になってでも、一緒に生きていけたらと思ってしまったんだ。エドワードの手のひらにそっとハイデリヒの片手が重なる。そして自然に体が引き寄せられ、くちづけられた。自分より少し体温の低いくちびるに、エドワードは病気のせいなのかなと思った。重ねるだけのくちづけが終わっても、ハイデリヒはそのままエドワードを抱き寄せたままにしていた。お互い離れる気もなく、かといって抱きしめあうこともなく寄り添うだけ。ハイデリヒの胸元に耳を寄せると、とくとく、心臓の動く音がして嬉しかった。
「エドワードさん」
ひどく優しい、何もかもを許すような声色。オレンジ色の夕陽の色と合わさって、全てが作り物みたいに思えた。そっとハイデリヒの顔を見れば、やっぱり優しい笑顔のままで。
「僕も、親も友達も仲間も全部捨ててもいいくらいに、あなたが好きなんです」
そうしてぐっと瓶の中身を飲み干した。空になった瓶を渡され、エドワードはぼんやりとハイデリヒがまぶたを閉じるのを見ていた。
「あなたが好きです、次に起きたら、それからはずっと一緒ですよ。嬉しいな。あなたとずっと、一緒だ」
そう呟きながら幸せそうに笑うハイデリヒの手をぎゅっと握り締める。うん、うん、全てに頷いて、エドワードの目からは涙がこぼれた。ハイデリヒが死なずにすむという嬉しさと、こんな風に追い詰めるようにして彼の平凡な人生を奪ってしまった切なさの、涙。
次に目が覚めたらどうしようか、ああまずは体調を整えて、それからそうだな、数年くらいならまだ成長は続くだろうからそれまではハイデリヒの大切な親や友達と一緒にいさせてあげたい。それから、皆から離れなくちゃいけなくなったらどうしようか。お前と一緒に考えていけばいいか、時間はたくさんあるんだ、本当に、たくさん。
「ずっと、一緒にいられるな」
好きだよ、アルフォンス。そっと閉じたまぶたにくちづけて、しずかな病室で、二人の新しい日々を始めるための儀式が終わった。
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