あり得べからざるもうひとつの世界
鋼の錬金術師の二次創作テキスト/主にハイデリヒ×エドワード/ほのぼのからイロモノダブルパロ18禁までなんでもあり
錬金術師の宅急便(gk)    /2005年11月08日(火)
・追悼ものが書けませんよ
・随分前から萌えていた魔女宅ネタ
・続く…のか?
・妄想した人:どスランプgk
 ―――さあ?特にきっかけらしいことは覚えいないなあ。空を飛ぶって
願望は誰でもすこしは持ってるんじゃない?まあ問題はその、度合いは
人によりけりってところだけど、確かに僕の場合ほんのちょっと重症
かもしれない。そういえば小さい頃買ってもらった飛行機の模型なんて
もう数え切れないほど分解したり組み立てたりしてね、そう今も大事に
寝室のベッド脇に飾ってあるよ。…うん、そうだね目下パイロット目指して
勉強中ってところ?そうそう自分の操縦で空を飛んでみたいって思うけど、
どうせだったらいちから関わりたいな、そういうの僕だけじゃないよ。
仲間を集めていろいろ研究したりしてるんだ、僕が特別なにか変だとか、
それはそうだけどさ、要するに僕は空が好きなんだ。だから空を飛べるなら
飛行機でも飛行船でも…ってあはは、それはちょっとどうだろう。エドワード
さんは危なっかしくてなんか、いたた、いた、わかった僕が悪い僕が
悪かったです。…うーん、うん、それはとっても興味深いんだけど、でも
遠慮するよ。僕は自分の力で空を飛んでみたいんだ。ねえ、ところで
それって僕のため?なんだか嬉しいな。ねえエドワードさんはさ、―――
 そうして僕はもったいなくも魔女直々の申し出を丁重に断った。彼は、
そう彼はれっきとした男なんだけれど魔女の業界では女の魔女もいれば
男の魔女もいるそうで、じゃあなんで魔女っていうの?と聞いてみても
彼自身は知らないというし大体俺は魔女じゃねーなんて言っているので
それは置いといて、彼はなんと僕に魔女のトップシークレット中のトップ
シークレットである飛行技術を教えてくれるというのだ。彼と出会った
ばかりの僕なら嬉々としてメモを片手に耳を傾けていただろうに、僕は
もうそれを知らなくてもよかった。彼の足元で黒猫のアルがにゃーと
鳴いてたぶん僕の悪口かなんかを言ってるんだろうけど彼はそれを
聞いてケラケラ笑っていて、釈然としない何かを腹のうちに抱えながらも
どうにも僕と同じ名前の黒猫はあまり僕のことを気に入ってくれていない
ようなので仕方ない。アルは面白くなさそうにぬるいミルクを舐めていて、
最初は取り付く島もなかった彼が今は僕とお茶を楽しんでいる。それが
単純に嬉しい。僕が彼らと出会ったのは僕が街で買い物をしてる最中
だった。
 風の流れに敏感なのはいつのまにか習慣づいてしまったもので、その
瞬間街の空気にどこか違和感を感じふと顔をあげて、僕は目を疑った。
建物と建物の隙間、通行人のはるか頭上を、ほうきに跨った人間が飛んで
いるのだ。音もなく、すいーっとまるでとんぼみたいな緩やかさで地上の
混雑をものともせず悠々と飛んでいく。仕掛けなんてものは見当たらない。
気づいた人たちがどよめいていた。念のため目をこすってからもう一度
じっくり見てみたけれどそれは幻でもなんでもなくて、ほうきと黒い衣装
から昔話に出てくる魔女だと思い当たった。だけど僕の街に魔女が住んで
いるなんて聞いたことがない。僕は咄嗟に走り出した。魔法だとか魔術
だとかそんなものを僕は信じてるわけじゃない。飛行機を飛ばすのは
翼とか推進力とかそういったものでとにかくそんな非科学的でうさんくさい
魔女なんて存在はこれまでまったく信じられなかった。けれどこうして
目の前を人が飛んでいくのだから僕が取るべき行動は追いかけて
捕まえて頼み込んで仕組みを説明してもらうことだ。今後の研究に
役立つかもしれない。僕はとにかく話を聞きたくて夢中で、角を曲がった
ところで飛んでいた金髪の子が警官に問い詰められてるのを見て、
ひとまずそこから離れ人気のない路地で泥棒ー!と声を張り上げた。
警官が騒ぎを聞きつけてこっちにやってくる。魔女はその隙にこっそり
逃げ出したようだ。僕は知らん顔で魔女を追う。よく見れば傍らに黒い
猫も走っていた。ますます昔話の魔女っぽい。ほうきを持ったまま早足で
逃げる金髪の子はなんていうか、ちっさいくせに足が早いというか。
止まってほしいけどなんて呼んだらいいかわからない、ので僕は適当に
呼んでみることにした。無視される可能性はもちろん考えていたけれど、
金髪の子は意外にもあっさりぴたりと足を止めた。誰が魔女か!俺は
錬金術師だ!それと男だ!なんて怒鳴られた。黒猫がため息をついた
ように見える。僕にしてみれば魔女も錬金術師も変わらないと思うんだ
けれど、迫力に気圧されてしまってはあすみませんと思わず頭を下げた。
金髪の子と黒猫はすぐ立ち去ろうとする。僕は慌ててあの、と声をかけた。
錬金術師だかなんだか知らないが、彼は背を向けたまま助けてくれた
ことには礼を言う、そう言い捨ててまたほうきに跨って空を飛んで
いってしまった。僕はぽかーんと夢でも見ているような気持ちでその
後姿を見送った。しかし僕の長所は諦めが悪いこと。その頃の彼はその
ことをまだ知らない。
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